2020/09/26 14:18


maruでは、各地で受け継がれてきた手しごとの温もりある商品をお届けしています。そのひとつ、丸森町ではつるやわらなど自然の素材から作る技術が伝承されてきました。商品一つ一つができるまでには、代々技術を受け継いできた作り手の姿、その人々の想いがあります。

今回の記事では、丸森和紙の職人、宍戸工房4代目の宍戸信成(80)さんの和紙作りに込める想いをお届けします。

温もりのある白さと柔らかい手触りが魅力の丸森和紙、長年和紙を作り続けてきた裏側にはどんな想いがあるのでしょうか。


伊達家にも納めた歴史ある丸森和紙

ーー丸森和紙は400年ほど前から続くと言いますが、どのような歴史があるのでしょうか。

宍戸さん「そうですね。丸森和紙は400年前から続いています。丸森は宮城県の中でも和紙作りの歴史が古くて、江戸時代に福島県から職人を呼んで和紙作りを教わったことが始まり。家の障子や襖の紙として使われるようになりました。江戸時代には、伊達家に納めるための和紙も作られていたそうです。」

ーー宍戸さんはどのように職人になったのですか?

宍戸さん「中学校を卒業してすぐ、埼玉へ和紙作りを学びに行きました。その後丸森に帰ってきて、家業を継いで60年以上やってきました。宍戸工房の紙は、伊達政宗を祀っている仙台市の瑞鳳殿の御朱印にも使われているんです。」


48もの工程を経て完成する和紙

ーーそもそも、和紙作りはどのように行われるのでしょうか。

宍戸さん「和紙作りというと一般の人は紙漉きの場面を思い浮かべるけど、実際にできるまでには48の工程がかかるんです。和紙は楮(こうぞ)の木の皮とトロロアオイの根をドロドロに溶かしたものからできています。楮の木の皮を切って、蒸して、木の皮を剥ぎます。樹皮から一番外の皮を取り除き、残った白い部分を軟らかくなるまで煮る。それから、水に晒して砕いて綿のようにそこへトロロアオイの根の粘液を混ぜながら、水に溶かし、漉く。紙漉きが終わったものを干して……と、全部で48の工程がかかります。」


ーーそんなに工程がかかるんですね……長年職人をやって嬉しいことはどんなことですか。

宍戸さん「小中学生が毎年卒業証書を作るために紙漉きの体験に来ることですねえ。子どもたち一人一人が紙を漉くんです。原料を煮るところから見るから、来た子どもたちは『こんな風にできるんだ』と驚くんです。自分が作った一枚しかない紙で喜んでもらえること、思い出に残してもらえることが嬉しいですね。」


生活スタイルが変化する中での葛藤

ーー逆に長年続けてくる中で大変なことはどんなことでしょう。

宍戸さん「最近は生活スタイルも変化してきて、だいぶ厳しい状況が続いてます。今は書道や水墨画の紙として注文を受けるのがほとんど。2011年の東日本大震災を境に注文が減り、今年、新型コロナウイルスの影響でさらに注文が減ってますね……。紙が売れない状況が続いていくので、不安ではあります。昔は10軒工房があれば、あそこの工房よりも良い紙を作りたい……と競争する意識もありましたが、今はそうもいかない……」

ーーそんな中でも丸森和紙を作り続けることには、どんな想いがありますか。

宍戸さん「やっぱり、丸森和紙が続いてきた伝統を絶やしたくないからです。最近は和紙のマスクなど、和紙を活用した新しいものも他の地域では出てきているので、丸森和紙でも新しいものを作っていけるようにはしたいです。」

宍戸さんからは60年以上、職人を続けてきただけあって、一つ一つの言葉から強い想いが感じられました。たしかに、逆境に立たされている現実はありますが、現代の生活スタイルや暮らしだからこそ、作り手の想いが込められた和紙が生活の中に溶け込める可能性を秘めています。


宍戸さんが描く丸森和紙の未来、ものづくりのアイデアについては後編に続きます。


(文・木幡)